農学原論は、近代における農業・農学のあり方について哲学的批判的に省察する分野です。農業・農学の使命を、増加する人口を永続的にまかなう安全な食料の生産とするとき、食料生産の確保と食料分配の公正化、環境と人間の生命に配慮した持続的な生産技術体系が必要になります。しかしこれらは既存の社会システムの中に埋め込まれているため、農林漁業が営まれたり、農学として研究されたりする具体的な場の社会や文化との連関を抜きにして考えることはできません。そこでは、時代を規定する社会的、経済的、思想的な背景を分析のなかに取り込みつつ、未来に向けた農業・農学を構想することが求められます。私たちの分野の研究目的は、こうした使命を目標におきながら、経済学・社会学・哲学倫理学・人類学・思想史・科学史・文化研究などの方法論を用いて、そこに至る道筋を探るために現状を根底から問い直すところにあります。